伸線加工の被膜処理とは?【種類と特徴】

伸線加工を行う前にはスケール落としの後に、伸線加工の前処理として、スケール除去後の線に被膜処理を行うことがあり、伸線性の向上を主な目的としています。

この記事では、そんな被膜処理について解説します。

目次

被膜処理の必要性

メカニカルデスケーラなどでスケール除去した線であれば、伸線前に被膜処理を行わないで伸線を行うことも可能であり、実際にそのように伸線加工を行っている会社も多くあります。

しかし皮膜処理を行うことによって、皮膜自体が潤滑性を上げたり、皮膜によって潤滑剤の引き込みが良くなり、伸線性を上げることができるため、ダイス寿命の延長が伸びたり、線表面の状態が良くなることが期待できます。

前処理の種類

伸線加工前に行われる、被膜処理の代表的なものを3つ紹介します。

石灰被膜(せっかいひまく)

石灰はアルカリ性なので、酸洗いでスケール除去を行う場合には、中和処理も兼ねて使用されることが多い被膜方法です。

石灰を溶かした浴に数分間ドブ漬けして、乾燥させることにより線表面へ皮膜処理を行います。

費用を安く被膜処理を行うことができ、伸線後に被膜を除去することも容易であり線表面を変質させるようなことも無いため、後工程で熱処理やめっき工程などがある製品でも多く使用されている被膜処理になります。

しかしながら、除去することが容易ということで、皮膜の密着性はあまり良くなく、剝がれやすいため高炭素鋼や高速伸線などの負荷が掛かる(条件が厳しい)ような伸線加工には不向きです。

リン酸被膜(りんさんひまく)

リン酸被膜は石灰被膜・ボラックス被膜とは違い、線の表面と科学的に反応させて被膜を行う方法であり、線表面との反応によりしっかりと密着した被膜が形成されます。

この被膜の結晶が形成されて線表面に微細な凸凹ができるため、潤滑剤が線表面に良く付着してダイスへの引き込み性が良くなります。

また、線表面と化学反応して密着性の高い被膜が形成されているため、石灰被膜では不向きだった高炭素鋼や高速伸線などの、負荷が高い伸線条件でも耐えることができます。

しかしながら、密着性が高いため被膜の除去が容易ではないため、熱処理やめっき工程などがある場合には不向きな被膜処理になります。

ボラックス被膜(ホウ砂被膜)

ボラックス被膜はホウ砂被膜(ほうさひまく)とも呼ばれている方法で、石灰被膜と同じく表面に付着させる被膜方法です。

石灰被膜よりも線との密着性が高いので剝がれにくく、石灰被膜では向いていない高炭素鋼の伸線や高速伸線も行うことが可能です。

また、皮膜の除去も容易にできるため、熱処理やめっき工程などが後工程にある場合でも使用ができます。

石灰被膜やリン酸被膜の場合には数分間浸漬する必要がありますが、ボラックスの場合には短時間で付着させることができるため、デスケーラと伸線機の間にボラックス浴を入れて伸線しながら皮膜処理を行うインライン処理も可能です。

伸線加工の前処理まとめ

今回は伸線加工前の皮膜処理について、簡単ですが3種類を紹介しました。

それぞれの皮膜処理で特徴があるため、前処理で被膜処理を導入するとなった場合には、後工程やランニングコストなど、様々なことをよく検討する必要があります。

皮膜処理は必須ではないため、スケール落としを行って伸線を行うというのもコストメリットが大きくなるので、その製品がどのような用途で使用されるのか、そもそも皮膜処理が必要なのかというところから検討すると良いでしょう。

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この記事を書いた人

伸線加工を行っている会社で品質管理を行っています。
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