伸線機の冷却方法は?【線とダイスの冷却】

伸線加工で使用される現代の伸線機には、伸線中の線や伸線ダイスを冷却するための冷却水が循環していますが、昔の伸線機には冷却機能が無く、ダイス寿命の問題や線の脆化の影響があるため、伸線速度は数十メートルという、とても遅い速度だったそうです。

この冷却方法は伸線機によって異なっており、特に線を冷やすために行われているブロック内の冷却水は、循環方法が複数の種類があります。

この記事では、伸線機の冷却機能であるブロックの冷却と、ダイスの冷却についてメインに紹介します。

目次

伸線機のブロック冷却方法

ブロックの冷却方法は冷却水の循環方法によって分類されており、方法によって冷却効果が異なるため、冷却効果が劣る方法では線が冷めず延性が落ちて断線に繋がるため、伸線速度をあまり上げる事は基本的にできません。

スプレー式

ブロックの内側に水を吹き付けて冷却する方法で、回転しているブロック内壁に向かって冷却水を吹き付ける事によってブロックを冷却します。

吹き付けた水は内壁から落ちて伸線機内の排水ルートを通り、工場の循環水に戻る仕組みになっています。

水を吹き付けるだけなので構造がシンプルでイメージもしやすいかと思いますが、線速が上がってくるとブロックに吹き付けた水が遠心力によって、ブロック内壁に水が張り付いて落ちなくなってしまいます。

結果的に冷却水の循環が悪くなってしまい、冷却効果が下がってしまうため、あまり線速を上げる事ができません。

貯水式

ブロックの内側に水を貯めて、貯まった水によってブロックを冷却する方法です。

こちらもスプレー式と同様に、線速が早くなってブロックの回転速度が上がってくると、遠心力によって水がブロック内壁に押し付けられてしまい循環が悪くなり、冷却効果が落ちてきてしまうため、高速な伸線を行うことは難しくなります。

ナローギャップ式

ブロック内側に1mm程度の隙間を設けて壁を作り、その壁とブロックの間に水を常に流すことにより冷却する方法です。

貯水式とは異なり、狭い隙間に水を供給し循環し続けるため、遠心力の影響を受けにくく冷却水が循環し、回転するブロック内壁の水も押し出され排水されるため、常に冷たい水を供給することができ高い冷却効果が得られます。

ナローギャップ式であれば、ブロックの回転数が高くても線の冷却を行うことができるため、分速1000mを超えるような線速にも対応できるようになってきます。

空冷式

これは冷却水を使用しませんが、ブロックに巻かれている線に直接風を当てて冷やす空冷方式の物です。

何も冷却システムが無いよりは良いですが、あくまで空冷なので冷却水を循環させる水冷方式と比較すると冷却効果は大きく劣ります。

バイクや車のエンジンでも基本的に水冷式の方が優秀です。

伸線機のダイス冷却

伸線機伸線ダイスも水冷を行う仕組みがあります。

伸線ダイスは線を変形させるときに発生する加工熱と、線とダイスが接触していることによって発生する摩擦熱によって、とても高温になります。

ダイスで加工中の線は内部で200℃を超えています。

そんな高温の状態だとダイス自体もダメになってしまうため、ダイスを冷却するために、ダイスの外側に循環水を流すことで、ダイスを水冷する仕組みになっています。

私は実物を見たことがありませんが、ダイスの冷却で使用された循環水をそのままダイス出口まで送り、ダイスから出線してきた熱々の線を直接水に触れさせることで、線を急速に冷却する仕組みを持った伸線機もあるようです。

ダイスから出てすぐに冷却することで、時効硬化を防止して延性を保ち断線を防ぐ効果があります。

伸線機に供給する冷却水

一般的には工場内に循環している冷却用の循環水を使うことが多いかと思いますが、この水自体も冷やす必要があります。

工場内で使用される循環水は、伸線機以外にも冷却が必要な機械があればそちらにも供給され、熱を吸収し排水側に吐き出されていますが、ただ循環しているだけでは、循環水はどんどん温まってしまうため、吐き出された循環水はクーリングタワーと呼ばれる水の冷却装置により冷却されます。

クーリングタワーは水を冷やすための装置で、ファンによって空気の流れを作り、水に空気を当てることによって発生した気化熱を使用して冷却を行っています。

クーリングタワーによって冷やされた循環水は再度工場内に供給され、伸線機のブロックの冷却やダイスの冷却などに使用されています。

伸線機の冷却まとめ

今回は伸線機の冷却について紹介しました。

様々な加工機械で冷却というのは行われていますが、伸線機は構造がシンプルな故、線やダイスの冷却部分がとても目立つように思います。

本や論文などで、伸線加工は冷却を行う必要があるというのはよく見ますが、伸線加工を実際に行っている現場の方も、「冷やせ、冷やせ」と、伸線機に向かって送風機を当てているのを見たことがあり、やはり実際に現場でも冷却をしっかり行わないとダイス持ちが悪くなったり、断線が多く発生するということがあります。

何かトラブルがあると、伸線潤滑剤やダイスの種類やダイス角度など難しい部分に目が行ってしまいがちですが、冷却するという基本的な目線も忘れないようにしたいです。

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この記事を書いた人

伸線加工を行っている会社で品質管理を行っています。
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