伸線加工における圧着ローラーとは?仕組みや使い方・効果を解説

伸線加工で使われる圧着ローラーとは?のサムネ画像
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伸線加工の現場では、伸線ダイス潤滑剤などのメインとなる資材だけでなく、さまざまな資材や治具を使用して伸線を行っています。

その中でも今回は圧着ローラーという、潤滑剤を線材表面にしっかり押し付けて定着させるための装置を紹介します。伸線加工の効率や品質に直結する存在です。

本記事では、圧着ローラーの基本、仕組み、使い方、そして導入時の効果や研究報告についてわかりやすく解説します。

目次

圧着ローラーとは?

圧着ローラーとは、伸線加工において粉状の乾式潤滑剤を線材表面に強制的に押し付け、定着させるための回転ローラーのことです。

通常の伸線では線材とダイスの摩擦を低減するために潤滑剤の中を線が通ることで、線に潤滑剤が付着して線とダイスの潤滑性を上げていますが、何かしらの要因で潤滑剤を十分に供給できないと、急激な摩耗や断線の原因になります。

そこで圧着ローラーを用いることで、ただ潤滑剤の中を通して、線に付着することを期待するのではなく、ローラーで線に潤滑剤を押し付けることで潤滑剤が線材に均一に付着しやすくなり、伸線加工中の摩擦を軽減できるのです。

特にメカニカルデスケーラを使用した線によく使用されるようです。

圧着ローラーの仕組みとは?

圧着ローラーの基本構造は「回転ローラー」と「挟む機構」で構成されています。

先端にローラーがついている洗濯バサミのイメージで、ローラーに挟まれた線材が潤滑剤の満たされた中を通過するときに、潤滑剤がローラーと線の間に入り込み、物理的な圧力でローラーと線材表面に定着します。

このときの圧着ローラーの役割は以下の通りです。

  • 均一な塗布:ローラーによって潤滑剤が薄く均一に広がる。
  • 定着力の向上:通常の方法よりも剥がれにくい潤滑膜が形成される。
  • 加工熱の抑制:潤滑剤がしっかり付くことで、摩擦低減によって線材の温度上昇を抑える。

圧着ローラーの使い方とは?

圧着ローラーは伸線機の潤滑ボックス(潤滑剤供給部)に入れて使用します。

  1. 線材を潤滑ボックスに通す。
  2. 圧着ローラーで線を挟む。
  3. 潤滑ボックスに潤滑剤を投入する。
  4. 伸線を始めると、線を挟んだローラーが線に動かされて回転し、潤滑剤を線に付着させる。

これにより、線がダイスに入る時点でローラーの働きによって潤滑剤がしっかり付着しているため、ダイス摩耗や加工熱の抑制、断線リスクを低減できます。

こちらの動画がわかりやすいです。圧着ローラーを付けた途端に潤滑剤がしっかりと供給され線が白くなります。

圧着ローラーのメリットとデメリットとは?

メリット

  • 潤滑膜が安定するため摩擦や発熱を抑制できる
  • ダイス寿命が延び、コスト削減につながる
  • 加工品質が安定し、断線などのトラブルが減る
潤滑膜が安定するため摩擦や発熱を抑制できる

圧着ローラーによって線表面に安定的に潤滑剤を付着し、供給できるのでダイスと線の摩擦を抑制し、それによって発熱も抑える事ができます。

また、引き抜き力も下げる事ができます。

ダイス寿命が延び、コスト削減につながる

潤滑効果が増して摩擦が減ることによって、ダイスの摩耗が抑えられ交換頻度を減らすことができ、ダイス使用枚数が減ってランニングコストの低減につながります。

加工品質が安定し、断線などのトラブルが減る

ダイス摩耗が減ることで、線材の品質項目となる線径が安定し、潤滑効果の向上によって断線によるトラブルも削減が期待できます。

デメリット

  • 導入・管理コストがかかる
  • 潤滑剤やローラーの管理が必要になる
  • 皮膜処理品ではあまり効果が無い
コストがかかる

圧着ローラー自体を購入する必要があるので、初期コストが掛かります。またローラーも摩耗をしてくるので、定期的な交換が必要となり、ランニングコストも掛かります。

ローラーの管理が必要になる

圧着ローラーは回転体を粉状の乾式潤滑剤の内部で使用するので、定期的に回転しているか確認する必要があります。

回転しなくなったローラーで挟みこんでいると、線にキズを付けてしまったり、潤滑剤を逆に擦って落としてしまうことになります。

皮膜処理品ではあまり効果が無い

酸洗を行ってリン酸被膜などで、伸線前にしっかりと被膜処理を行ったものに関しては、圧着ローラーを使用してもそれほど効果は得られないようです。(次項で紹介)

圧着ローラーに関する研究結果

圧着ローラーの効果について調べると、効果について報告されているものを見つけたので紹介します。

民間企業での研究結果

乾式伸線加工における潤滑剤導入法として「圧着ローラ法」として紹介されており、線材の表面処理状態と線速・圧着力によって、引き抜き力と付着量の変化を研究した結果がありました。

圧着ローラーを付けた方が潤滑剤の付着量が多く、引き抜き力が下がるのですが、酸洗い+リン酸被膜処理を行った線についてはあまり効果は見られず、メカデス品や酸洗いのみ品で効果が大きいとの結果です。

(参考:『鉄と鋼』論文「伸線加工における潤滑剤圧着ローラの効果について」

「工場に導入した結果、寿命が○倍になった」などの具体的なデータは見つかりませんでしたが、私が在籍する会社でも圧着ローラーを使用することで、明らかに潤滑剤のノリが良くなることは体感しています。

まとめ

今回は伸線加工における圧着ローラーの仕組み使い方などの紹介を行いました。

圧着ローラーは潤滑剤の供給を促すことで線とダイス間の摩擦を減らし発熱や摩耗を抑え、加工の安定性と効率を高める装置です。

メリット・デメリットがあるので、導入する際には検討が必要となりますが、それほど高額なものではないので、潤滑剤の供給について困っているのであれば、実験的に導入するのもよいのではないかと思います。

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この記事を書いた人

伸線加工を行っている会社で品質管理を行っています。
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