伸線加工でのダイスマークとは?【発生原因と品質への影響を解説】

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伸線加工をしていると、突然、線の表面に長手方向のキズが入り始める、という経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。

そのキズは、ダイスマークと呼ばれているものかもしれません。

ダイスマークは、伸線ダイスのベアリング部に傷が入ったり、焼き付きが発生したりすることで、線の表面に長手方向へ線状のキズとして現れるものです。外観不良として製品がNGになるだけでなく、線径にも影響を与えてしまいます。

この記事では、ダイスマークが発生する原因と、ダイスマークが品質に与える影響、そして現場で取り組める予防・対策について解説します。

目次

ダイスマークとは?

ダイスマークとは、線表面の長手方向(引き抜き方向)へ発生した線状のキズのことです。

伸線ダイスの内部はベル部→リダクション部→ベアリング部→リリーフ部という構造になっていますが、ダイスマークはこのうちベアリング部に発生したキズが原因となります。

ベアリング部はダイスから出てくる線径を決める最も重要な部分で、ここにキズが入ると、線がダイスを通過するたびにそのキズが引きずられ、製品表面に連続したキズとして現れます。

ここで注意が必要なのは、ダイスのキズは自然に回復しないという点です。

生き物では無いので当たり前ですが…

一度キズが発生すると、そのキズに気づいて対処するまでの間は、ずっと製品にキズが入り続けてしまうため、早めに気づくことが大切です。

ダイスマークの発生原因

ダイスマークの直接の原因は「ダイスのベアリング部にキズが入ること」ですが、そのキズがなぜ発生するのかは様々な原因が考えられます。

溶接バリの処理不足

ダイス交換の際には、先付けローラーで線を細くしてからダイスに通し、溶接でつなぐという作業が必要になります。

このとき、先付けローラーや溶接によって発生したバリをきちんと取り除いておかないと、そのバリがダイスのベアリング部にキズを入れてしまい、ダイスマークの原因となってしまいます。

溶接部分は通常部分よりも硬くなっています。

「製品に溶接部を混入させないための処理」という意識はあっても、溶接時のバリ処理が甘いと自工程のダイスにダメージを与えてしまうことになります。溶接の際はバリをしっかり処理してから伸線を再開することが大切です。

スケール(酸化皮膜)の残留

線材の表面に酸化皮膜やスケールが残ったまま伸線を行うと、それらが研磨材のようにダイス内面を削り、キズをつけることがあります。

錆びやスケールは、通常の部分よりも硬い鉄になっています。

素材の保管状態が悪く錆が発生していたり、酸洗などの前処理が十分でなかったりすると起きやすい問題です。ダイス寿命を縮める原因にもなるため、保管状態の管理と前処理工程が大切になります。

潤滑不足による焼き付き

潤滑剤はダイスと線材の間の摩擦を低減し、焼き付きや表面キズを防ぐために欠かせないものです。

潤滑剤の量が不足していたり、加工条件に合っていない潤滑剤を使用していると、ダイスと線が直接接触して摩擦熱が大きく発生し、焼き付きが起きてしまいます。この焼き付きがダイス表面にキズを与え、ダイスマークの原因となります。

潤滑剤には乾式・湿式・油性など様々な種類があり、線材の材質や加工条件に応じて適切なものを選定する必要があります。

冷却不足による焼き付き

潤滑剤をしっかり入れていても、冷却水の出し忘れや詰まりなどで、ダイスや線が十分に冷却されていない状態で伸線を続けると、やはり焼き付きが発生してしまいます。

実際、職場でもダイスの焼き付きが発生した際に、よく見たら冷却水を出し忘れていた、ということがありました。冷却系統の詰まりや流量不足も同様の問題につながるため、日常点検でしっかり確認しておくことが大切です。

ダイスマークが品質に与える影響

ダイスマークが発生してしまうと、製品にはどのような影響があるのでしょうか。

外観品質の低下

最もわかりやすい影響が外観不良です。ダイスマークは線の長手方向に連続して現れるため、目視でも比較的確認しやすいキズです。

外観品質の要求が厳しい製品では、そのまま不合格品となり、客先クレームや返品につながるリスクがあります。

また、ダイスのキズが発生してから発見されるまでの間は製品へのキズが続くため、不良品の量が増えやすいです。

線径規格への影響

伸線する製品は、最大線径・最小線径・偏径差などの線径の規格値が定められています。

ダイスマークが発生するとこれらの規格値から外れてしまうことが多くあり、特に偏径差が大きくなってしまう傾向があります。

ダイスマークが発生すると、指で触っても凸凹を感じることもあるので、そのような場合、規格値内に収まることは稀です。

疲労強度への影響

線表面のキズは、繰り返し応力がかかる用途では、傷部分が応力集中源となる場合があるようです。

バネや構造用ワイヤーのように動的な負荷がかかる製品では、ダイスマークが起点となって疲労破壊が早まるリスクがあります。

外観上は問題なく見えても、使用中に破断するという可能性もあるため、用途によっては特に気をつける必要があります。

次工程での断線リスク

深いダイスマークが入った線を、続けて細い径に伸線したり、曲げ加工に使用したりすると、そのキズを起点として断線が発生することがあります。

伸線工程内の断線は生産性の低下に直結するだけでなく、断線した箇所の前後製品の確認も必要になってくるため、工数と損失が積み重なってしまいます。

また、ダイスマークがある線を伸線すると、伸線したダイスが傷んでダメになってしまうこともあります。

ダイスマークの予防・対策

ここまでで、ダイスマークの原因と品質への影響についてわかっていただけたかと思います。では、現場でどのように予防・対策を行えばよいのかをまとめてみました。

バリ処理を徹底する

ダイス交換時の溶接作業では、バリの除去を確実に行うことが基本中の基本です。

「製品に混入さえしなければいい」という考え方ではなく、ダイスを守るという観点でバリ処理の品質を意識することが大切です。

加工条件に合った潤滑剤を選定する

使用する線材の材質や伸線速度、減面率に応じて適切な潤滑剤を選定することで、ダイスへの負荷を下げ、焼き付きを防ぐことができます。

潤滑剤の種類だけでなく、減ってきたらしっかりと補充するという運用面での管理も大切です。

冷却系統を定期的に点検する

冷却水の流量・詰まり・温度管理は、ダイスと線材の保護に直結します。日常点検の習慣をつけ、冷却不足の状態で伸線を続けないようにしましょう。

素材の前処理・保管状態を確認する

スケールの残留を防ぐために、酸洗などの前処理が適切に行われているか、また素材の保管状態(錆や傷の有無など)を確認しておくことが大切です。

定期的な外観チェックを行う

先述した通り、ダイスのキズは自然に回復しないため、発見が遅れると不良品の数量が増え続けます。伸線中の定期的な確認で異常の早期発見につながります。

ダイスマーク まとめ

今回は伸線製品に残るダイスマークの発生原因と、品質への影響について解説しました。

ダイスマークは、伸線ダイスのベアリング部に発生したキズや焼き付きが引きずられることで発生します。

主な原因は、溶接バリの処理不足・スケール残留・潤滑不足・冷却不足であり、それぞれへの対策を地道に積み重ねることが予防につながります。

また、品質への影響は外観不良だけにとどまらず、線径規格への影響や疲労強度の低下、次工程での断線リスクなど、製品の信頼性全体に関わってしまいます。

「キズが出てから対処する」ではなく、日常の管理と予防を徹底して、ダイスマークの発生しにくい安定した伸線工程を目指していきましょう。

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この記事を書いた人

伸線加工を行っている会社で品質管理を行っています。
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