伸線機は伸線加工のみを行う機械ですが、その伸線を行った製品は何かしらの方法で容器に入れて次工程または客先へ納品する必要があります。
そこで伸線加工では、巻き取り機(まきとりき)という機械で線を巻き取って容器に入れ、次工程や客先で使ってもらえる状態にします。
この記事では、伸線加工で使われている巻き取り機について解説します。
伸線加工の巻き取り機とは?
伸線加工における巻き取り機とは、その名の通り伸線を行った線(製品)を巻き取るための機械のことで、伸線機と連結させて、伸線機で加工され細くなって出てきた線を巻き取っていきます。
伸線加工を行った線は、1本が数百m〜数千m以上にもなる非常に長い製品が多いため、伸線機から出てきた線は巻き取っていく必要があり、それぞれの製品に合わせて最適な容器に入れる必要もあります。
巻き取る方式は、線径や次工程・客先の用途により複数の巻き取り用容器が存在するため、容器に合わせた巻き取り機が必要となります。
巻き取り機の種類
巻き取り機には、鉄パイプなどで作った枠(キャリアなどと呼ばれる)に入れるタイプの「コイラー型」と、糸巻きのようにボビンやリールに巻くタイプの「スプーラー型」の2つがあります。
コイラー型
コイラー型はキャリアなどのタイプの容器に入れるための巻き取り機で、太い線で多く使用され「ブロック回転型」と「ブロック静止型」の2種類が存在します。
どちらも共通するのが、ブロックという部分に線を一旦巻きつけたあとに容器に入れるという部分であり、スプーラー型のようにキャリアへ直接巻いていくということはしません。
ブロック回転型
ブロック回転型は伸線機と同じように、ブロックが回転して巻き取っていく方式で、後述するブロック静止型よりも太い線径のものを伸線する際に使用されます。
ブロック回転型の中でも巻き取った線を上に押し上げて巻いていくものや、下に押し下げて容器に落としていくもの、横向きに巻いていき貯まった線を一気に容器へ落とすような方式のものもあります。
ブロック静止型
ブロック静止型は固定されているブロックに線を巻いていく方式で、ブロックに巻かれている線を次に巻かれた線が押し出しながら巻き取っていく仕組みで、ブロック回転型よりも細い線で使用されています。
指にもう片方の手で糸を巻いていくイメージです。
仕組み上どうしても一周巻くごとに線が捻じられてしまうというデメリットがありますが、ブロック上に貯線できる量が多く長時間の連続運転ができるため、無人でしばらくの時間を動かすことができます。
スプーラー型
ボビンやリールを回転させて糸を巻き取っていくように伸線した線を巻いていく方式で、細い線で主に使用されています。
高速で巻き上げることができるのが大きな特徴で、数千m/minという速度で巻き上げることが可能です。
ボビンやリールは巻いていくと、巻かれた線の分だけ徐々に太くなっていくため、一定の線速を保つためにはボビンの回転数を調整する制御が必要であり、ボビンやリールの端から端まで綺麗に巻きつけるため、巻き付ける直前の線の出口はボビンの回転に応じて横移動する機器(トラバース)を取り付ける必要があります。
スプーラ―はかなり自動化が進んでおり、現在巻かれているボビンが満巻になったら自動で末端の処理を行い、次の空ボビンをセットして巻き始めるという機械もあり、省力化・省人化が進んでいます。
共通している部分
コイラー型とスプーラー型でどちらも共通しているのが、最終的に巻き取る際に矯正ローラーを使用して線クセを調整するというところです。
巻き取る際のガイドとしても使用されていますが、線クセを調整して次工程での使用時に、線がもつれたりなどのトラブルが発生しないよう、矯正ローラーで適切な線クセを与えています。
巻き取り機とは まとめ
伸線加工における巻き取り機について解説しました。
伸線における品質というと、線径や引張強さなどがメインとなりますが、実際には巻き取り機で綺麗に容器に納めるということも次工程・客先での使用時に「もつれ」などのトラブル低下に繋がります。
そのため巻き取り機で適切な線クセで綺麗に容器に入っていることというのも、実は大事な品質項目です。
また、線クセについてもコイラーやスプーラーの矯正ローラーで最終調整を行うので、巻き取り機はただ容器に入れれば良いだけでは無いのが難しいところです。
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