伸線加工のメリット・デメリット

どんな加工方法にも向き不向きがあり、それぞれメリット・デメリットが存在します。

伸線加工も例外ではなく、メリットとデメリットがあり、最適だとされた製品のみが伸線加工によって製造されており、現在に至っています。

この記事では伸線加工のメリット・デメリットを5つずつ紹介します。

目次

伸線加工のメリット

伸線加工のメリットとしては以下の5つがあり、それぞれのメリットを活かすことのできる製品に使用され、様々な用途に使用されています。

  • 引張強さと硬度が上昇する
  • 高精度な線径が出せる
  • 長尺品の加工が可能
  • 線表面の平滑化
  • 様々な金属の加工が可能
引張強さと硬度が上昇する

伸線加工は金属の塑性加工であり、特に伸線は強い加工硬化が発生するため、元の線径から細くすればするほど引張強度や硬度が大きく向上します。これにより、線径は細くとも強度の高い線材を伸線加工では作ることができます。

そのため、吊り橋のワイヤーやロープウェイのワイヤーなど、細くとも強度の必要な製品を作る際には、伸線加工で作られた鉄線が使用されます。

高精度な線径が出せる

伸線加工は伸線ダイスや伸線機を選定することで、0.1mm以下のような非常に細い線も製造可能であり、均一な線径を持つ長い線材の製造ができます。

これにより電子部品に使用されるような線や、医療用などにも使われる細い精密な線材を必要とする部品向けに製造することが可能です。

長尺品の加工が可能

伸線加工は数千m以上にも及ぶ長い線材を、止めることなく連続的に生産することが可能です。

そのため生産性が高く効率も良いため、需要の多い材料の大量生産に向いており、長尺が必要なケーブル用の銅線なども伸線加工であれば、連続で途切れなく生産できる伸線加工が向いています。

また、長尺品であると客先で使用する際に、材料となる線材の入れ替え回数が減るため、手間が減るというメリットもあります。

線表面の平滑化

伸線加工では潤滑剤や伸線ダイスを工夫することで、表面状態を滑らかな線に仕上げることが可能です。

これにより光沢を出したり、めっき工程などの後工程での品質向上や前処理を簡略化することが可能になります。特に精密な線の場合には表面状態の品質も要求されることがあるため、湿式潤滑剤やダイヤモンドダイスを使用するなどして表面状態が滑らかな線材を生産します。

様々な金属の加工が可能

伸線加工は鉄だけでなく、非鉄金属である銅やアルミなども細く長く加工することが可能です。

アルミ線は銅線よりも半分以下の重量のため、高い鉄塔などに張られている長い送電線にも使用されるため、長尺品が生産できる伸線加工が向いています。

伸線加工のデメリット

どんな加工方法にも良い面があれば悪い面もありますが、伸線加工も例外ではなくデメリットも存在します。

ここでは5つのデメリットを紹介します。

  • 加工硬化が起きる
  • ダイス摩耗の発生
  • 材料が脆くなる
  • 工場内が汚れやすい
  • 伸線できない材料もある
加工硬化が起きる

伸線加工の加工硬化によって強度を上げることができるのがメリットでもありますが、強度が上がるということは硬くなるということです。

硬くなることで、後工程にて曲げ加工などがある場合には曲げづらくなってしまったり、線の取り回しが悪くなってしまいます。

ダイス摩耗の発生

これは切削加工などでも発生することですが、伸線加工での金型とも言える「伸線ダイス」は摩耗を起こします。

特に硬い材料を使用したり、線速を上げて大量生産を行う場合はダイスが摩耗しやすくなり、交換サイクルが早くなりランニングコストが増加する可能性があります。

そのため適切な潤滑剤や、パススケジュールの設定が必要となってきます。

材料が脆くなる

パス回数が増えて加工硬化が進みすぎると、強度や硬度は上がりますが、靱性が無くなり脆い材料となってしまいます。

そのままだと後工程にて曲げ加工を行うと折れてしまったり、伸線を行うと断線が多発する場合がります。

パス回数が多い場合には、可能ならば途中工程にて熱処理をいれることで加工硬化を取り除き、断線などのトラブルを減らすことができます。

工場内が汚れやすい

伸線加工に必要な潤滑剤や鉄線のスケールなどで工場内が汚れやすいです。

特に乾式潤滑剤は粉状なので、気をつけていても溢したり、機械の振動などで舞ってしまい、床が粉だらけになってしまいます。

私自身も何社か伸線加工の企業を見学させていただいたことがありますが、どこの企業もそこは悩みの種のようでした。

伸線できない材料もある

伸線加工に適さない素材も存在します。

特に、非常に硬い材料や靭性の無い(伸びの無い)材料では、断線の多発やダイス破損のリスクが高まります。

金属であれば、伸線が全くできないわけでは無いでしょうが、採算性や精度の面から考えると行わないほうが良い場合があります。

伸線加工のメリット・デメリット まとめ

この記事では伸線加工のメリット・デメリットを5つずつ紹介しました。

伸線加工は線材を作るという面では長尺のものを高速で生産できるため、非常に効率的な加工方法ではありますが、伸線ダイスの管理や加工硬化に関しては気を付けなければならない面があります。

潤滑剤や伸線ダイスの選定によって、加工状態は変化するため、最適な加工条件を見つけて伸線加工のメリットを最大限活かす方法を見つけることが必要です。

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この記事を書いた人

伸線加工を行っている会社で品質管理を行っています。
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