伸線加工は細い穴の開いた、伸線ダイスに穴よりも太い線を通すことで加工を行っていますが、それは線が通っている状態だからできることです。
ダイスは摩耗をすれば交換する必要がありますし、線径の違う製品を作る際には、その線径に合わせたダイスに交換する必要があります。
では、交換直後の線が通っていないダイスには線をどのように通すのでしょうか?もともとはダイス径よりも太い線なので、そのままでは線はダイスを通りません。
この記事では、伸線ダイスへ線をどのように通すのかを解説します。
ダイスの線通し
交換したダイスへ線を通す作業のことを「線通し(せんとおし)」などと呼びます。
その名の通り、線をダイスに通す作業なのですが、冒頭で書いた通り伸線する前の線はダイス径よりも太く、そのままの太さでは通すことができないため、線の先端をダイスに通る太さまで細くする必要があります。
その作業は「先付け(さきつけ)」などと呼ばれており、目的のダイスに線が通るように、線の先端を細く加工する作業を行います。
先付の方法3つ
先付けの方法は複数ありますが、ここでは専用の機械を使う方法から道具を使わない方法まで、3つを紹介します。
先付機を使用して線を通す
「先付機(さきつけき)」と呼ばれる、道具(機械)を使用して先付けを行い線を通す方法です。
先付機の構造
先付機には製麺機のように、溝が彫られたローラーが上下に2本平行に並んでおり、ローラーに彫られた溝は太いものから細いものまで各種あります。
溝の深さはローラー1周のうちに、徐々に浅くなっていくように作られており、その浅くなったところで圧延されて細くなります。
上下のローラーはそれぞれ手前側(先付機を右から見ると上は右回り、下は左周り)に回るようになっています。
先付機の使い方
機械のスイッチを入れローラーが回り出したら、まずは細くしたい線に最も近い太さのローラーの溝に入れ、圧延し線を細くします。
線の角度を変えながら満遍なく細く圧延できたら、一度機械から抜いて通したいダイスに入れて、線が通るか確かめます。
線が通ればそこで先付け作業終了ですが、まだ線が太くて通らない場合には、先ほどよりも少し細い溝に入れて同じように圧延します。
細いダイスに通す際には細い溝まで使って圧延する必要がありますが、徐々に細くすることをせずに急に細い溝に通してしまうと、長手方向だけに圧延されるのではなく、横方向にも潰されてされてしまいバリが出てしまいます。
生地がはみ出した、たい焼きのようになってしまいます
このことから伸線のパススケジュールのように、急激に細くすることはせず、徐々に細くしていく必要があります。
やすりで削って線を通す
線の先端を、鉄やすりやグラインダーなどで削って先付けを行い、ダイスに線を通す方法です。
単純に削って細くする方法なのでイメージしやすいかと思いますが、ダイスに線が通る細さまで線を削らなければいけません。
それほど線が太くなければできますが、慣れていない人が行うと削れている部分と削れていない部分が出てきて、なかなか線を通すことができなかったり、逆に細くし過ぎてダイスへ通す際に断線してしまったりします。
伸び切れさせて線を通す
細い線限定になりますが、ペンチなどで線を掴んで手で引っ張って線を伸び切れさせると、切れた先端付近は伸びて細くなりますので、その細くなった線をダイスに通す方法です。
手で伸び切れをさせられるような細い線限定で、職人技のような方法ですが、先付機などの専用の機械が必要なく作業も早く終わらせることができます。
ダイスへの線の通し方まとめ
伸線ダイスへの線の通し方を3種類紹介しました。
ここでは私が知っている3種類を紹介しましたが、直径10mmを超えるような太い線の場合などではまた違った線の通し方があるかもしれませんので、この方法が全てではないと思っていただきたいです。
先付けした部分はどうしても傷が付いたり、バリが残っていることが多いので製品に混入させないように、線通しが終わったらその部分は切って破棄するようにしましょう。
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