パススケジュールとは?【決め方と影響】

複数の伸線機を連結して伸線を行う、連続伸線機では複数の伸線ダイスをセットして連続的に伸線を行い、狙いの線径に加工を行いますが、そのダイス径の組み合わせのことをパススケジュールと呼びます。

例えば5mmから1mmにダイス4枚で伸線する場合、4mm→3mm→2mm→1mmというダイスの組み合わせのことをパススケジュールといいます。

こんなパススケジュールは減面率が高すぎて実際には不可能ですが…

このパススケジュールの決め方によって、伸線性やダイス寿命・製品の仕上がりや品質にも影響が出てくるため、とりあえず最終的に狙いの線径になれば全てOKというわけでもありません。

この記事では、伸線加工のパススケジュールの役割・影響、代表的な決め方を紹介していきます。

目次

パススケジュール 3つの決め方

伸線ダイスの穴径は数多くあり、その組み合わせとなると無限にあります。

何を基準に決めたら良いのか悩むところかと思いますが、パススケジュールは減面率を元に大きく3つの決め方があります。

均等パススケジュール

連続伸線機にセットされる、全てのダイスの減面率を同じに設定する方法です。

この方法は単純で、昔から広く採用されているパススケジュールの決め方になります。

コーン型の連続伸線機のキャプスタン径も、均等パススケジュールで決定された径で設計されることが多いです。

等動力パススケジュール

伸線機でダイスから線を引き抜くために回っているブロックがありますが、そのブロックの動力(負荷)を各伸線機で同一にする設定方法です。

伸線機に入ってくる太い部分を伸線するダイスほど減面率を高く設定し、最終線径になる部分に連れて減面率を徐々に落としていきます。

徐々に加工硬化により線が硬くなっていくということと、線が細くなるにつれ線速が早くなるので、必然的に減面率を下げていくことになります。

均等パススケジュールよりも伸線温度が上がりにくく、炭素鋼などで発生する脆化現象による断線トラブルも減らせるということで、現在はこの方法が広く採用されてます。

等温パススケジュール

各ダイスでの加工時の温度を測定し、減面率を調整して、加工温度が各ダイスで同じになるように設定する方法です。

ダイスを通るたびに線は加工硬化によって硬くなっていき、ダイスを通るために変形する力も大きくなり発熱量も増していきます。

そのため等動力パススケジュールと同じように、最終線径のダイスにいくほど減面率を落として、温度の上昇を抑えます。

等動力パススケジュールと等温パススケジュールは、徐々に減面率が下がっていくことから「テーパードパススケジュール」と呼ばれています。

パススケジュールによる影響

「最終的に狙いの線径になれば良いじゃないか」という意見もあるかと思いますが、パススケジュールの違いによって発生する影響があります。

抗張力の変動

一般的にパス回数(ダイスを通る回数)が多いほど、線の表面にひずみが蓄積して鉄線は硬くなっていきます。

これは良い面と悪い面があり、強度が強く硬い線が欲しければパス数は多い方が求める線を作れます。

硬いということは同時に脆いということになりますので、延性が必要な線が欲しい場合にはパス数は減らした方が良いでしょう。

しかしながらパス回数を減らすということは、ダイス1枚あたりの減面率が増加するということなので、ダイス摩耗や断線のリスクが高まります。

ランニングコストの変動

パス回数が多いということは、使用するダイス、使用する伸線機の数が増えるためランニングコストに関わります。

ダイス枚数が多いとその分だけ交換するダイス費用が増加しますが、同じ線径に伸線を行うのであれば1枚あたりの減面率が減少し負荷が減るため、ダイス寿命は延びる方向になります。

ダイス費用を減らすために、パス数を少なくして減面率が高いパススケジュールで行う場合がありますが、ダイスへの負荷が上がり摩耗が早くなったために交換頻度が増え、結果的に費用がかかる可能性があるので注意です。

また減面率は製品の品質にも影響してきますので、安易にパス数を減らすことはおすすめしません。

パススケジュールとは?まとめ

パススケジュールについて、決め方とその影響について紹介しました。

パススケジュールは製造条件となり、品質に厳しい製品ではパススケジュールの変更も客先に報告が必要となる場合があるため、一度決定してしまうと安易に変更することができなくなります。

そのため、パススケジュールはとりあえず最後に狙いの線径になれば良いというわけではなく、品質にも影響しますので、決定する際にはしっかり検討して最適なパススケジュールを決めましょう。

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この記事を書いた人

伸線加工を行っている会社で品質管理を行っています。
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