伸線加工は長い歴史がある加工方法だということをご存じでしょうか?
実は伸線加工は紀元前から存在する金属の加工方法であり、様々な工夫・進化を遂げながら4000年を超える長い歴史を経てきています。
今回は、そんな伸線加工の歴史について紹介します。
伸線加工の起源
銅や金などの柔らかい貴金属を伸線していた形跡が遺跡から発見されており、伸線加工は紀元前からある金属の加工方法とされ、4~5千年の歴史があるといわれています。
紀元後には、アジアやヨーロッパでも伸線加工された細い金属が発見されており、ヨーロッパでは兵士の鎧の関節部分などに使用される鎖帷子(くさりかたびら)の製造のために、伸線加工によって鉄線が多く生産されていたようです。
日本での伸線加工の歴史
日本での伸線加工は安土桃山時代に銅製品の伸線が行われており、江戸時代には伸線加工を行っている様子の絵が残されています。
最初は銅や真鍮などの柔らかい金属を中心に伸線加工を行っていたようですが、徐々に鉄材の伸線加工も増えていきました。
その後、明治時代に八幡製鉄所が開業し線材の圧延が開始されると、伸線加工を使用したワイヤロープの製造などが出現し、戦後から本格的に線材の量産が行われます。
それに伴い伸線機や伸線用潤滑剤の開発、パススケジュールの研究などが行われ、線速が徐々に上がり、品質も向上して現在に至っています。
昔の伸線加工方法
伸線ダイス
現代では超硬合金やダイヤモンドなどを使用している伸線ダイスですが、昔の伸線加工では、硬い木材である樫(かし)に穴を開けそれを現在の伸線ダイスとして使用し、線を通すことで伸線加工を行っていました。
少し時代が進み、樫から金属製のダイスになると「叩きダイス」という、金属の板に穴が空いているものが使用されるようになります。
名前に「叩き」という言葉があるように、穴の周りを叩いて穴をゆがませて、サイズを出していくというダイスが使用されていました。
伸線設備
当初は人力や牛を使用してダイスから線を引き抜いていましたが、時代と共に水車を動力として使用するようになります。
そのころから伸線加工を行う工場は川沿いに多く構えられるようになります。その後、電動機(モーター)が使われるようになり、単頭式伸線機から連続伸線機が登場し量産が活発になった。
高速化によって加工熱の冷却も必要となり、伸線ダイスの冷却や貯線部分の水冷などが行われるようになり、さらに伸線速度の高速化が進んだ。
伸線加工の歴史まとめ
この記事では伸線加工の歴史を紹介しました。
当時はダイスは木材だったり、伸線機は無く人力で引き抜いていたりと、かなり原始的な方法で行っていた伸線加工ですが、現代になりダイスや伸線機も進化を遂げ、今でも進化を続けています。
しかしながら、ダイスに線を通して細くするという方法自体は3000年以上前から変わっていないということで、ある意味、伸線加工は完成された加工方法なのかもしれませんね。
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