伸線加工において、線径は最も基本的でありながら最も重要な品質項目です。
どんなに伸線性の良い条件で加工できていても、線径が規格値から外れてしまえば不良品となってしまうため、正確な測定ができる機器を選び、正しく使うことが必要です。
しかし線径を測る機器と一言で言っても、ノギスのような手軽なものから、生産ラインに組み込まれたレーザー測定器まで、様々な種類があります。
この記事では、伸線加工の現場で使われている線径測定機器について、それぞれの特徴や使い分けを紹介します。

なぜ線径測定機器が重要なのか
伸線加工は伸線ダイスの穴径によって製品の太さが決まる加工方法ですが、ダイスは使用するにつれて摩耗していくため、通常は徐々に線径が太くなっていきます。
そのため、生産中や生産後に線径をしっかりと測定し、規格値内に収まっているかを確認する必要があります。
また、伸線加工した線の断面は完全な真円にはならず、少し楕円になることが多いため、線径だけでなく偏径差(へんけいさ)も合わせて管理する必要があり、測定する角度や箇所によって数値が変わってくるという点も、測定機器選びや使い方において意識しておきたいポイントです。
同じ製品でも、測る場所によって数値が微妙に変わることはよくあります。
伸線加工で使われる線径測定機器の種類
ここでは、伸線加工の現場でよく使用されている代表的な線径測定機器を3つ紹介します。
マイクロメーター

伸線加工の現場で最も広く使われている測定機器がマイクロメーターです。
スピンドルとアンビルという2つの測定子で線を挟み込み、その間隔を読み取ることで線径を測定する接触式の測定機器で、0.001mm単位まで測定できる高い精度が特徴です。
価格も比較的安価で、持ち運びもしやすいため、生産現場での工程内検査や、検査室での検査など、幅広い場面で使用されています。
ただし、線を測定子で挟むという構造上、測定者によって挟み込む力にばらつきが出てしまうと数値が変わってしまうことがあるため、一定の力で測定するためのラチェットストップ(一定のトルクになると空回りする機構)を正しく使用することを周知しておくことが大切です。
「カチッと鳴らさないのが良いんだ」と言っている作業者もいれば、カチカチ何回も鳴らす作業者もいました…
また、使用前には基準となるゲージなどを使ってゼロ点調整(校正)を行っておかないと、そもそもの測定値がズレてしまうので注意が必要です。
ノギス

ノギスもマイクロメーターと同じく接触式の測定機器ですが、マイクロメーターに比べると測定精度は劣り、一般的には0.01mm単位での測定となります。
その代わり、太い線径から細い線径まで一台で測定できる範囲が広く、内径や段差の測定などもできるため、線径そのものよりも簡易的な現場確認や、太めの線材の測定に使われることが多い印象です。
150mmまで測定できるノギスをよく見ます。
伸線加工で求められる線径の公差は0.01mmを下回ることも多いため、最終的な合否判定にはノギスではなく、マイクロメーターや後述のレーザー測定機を使用することが一般的です。
レーザー測径機

レーザー測径機(レーザーマイクロメーターとも呼ばれます)は、レーザー光を線に当てて、その影の幅から線径を算出する非接触式の測定機器です。
接触式のマイクロメーターやノギスとは異なり、線に触れることなく測定できるため、線を傷つける心配がなく、伸線機にインラインで組み込んで、生産中の線径をリアルタイムに測定することもできます。
導入コストは高めですが、作業者ごとのばらつきも少なく、精度良く測定することができます。
レーザー測定器は一方向しか測定できないため、インラインに組み込む場合には複数方向(90°ずらして配置など)配置しないと、偏径差は測定できないので注意が必要です。
用途に応じた測定機器の選び方
それぞれの測定機器には得意・不得意があるため、目的に応じて使い分けることが大切です。
| 測定機器 | 方式 | 主な用途 |
|---|---|---|
| マイクロメーター | 接触式 | 工程内検査・最終検査 |
| ノギス | 接触式 | 工程内検査・太い線の測定 |
| レーザー測径機 | 非接触式 | 最終検査・インラインでの測定 |
生産中のダイス摩耗をいち早く察知したいのであればレーザー測定機をインラインに組み込む、太線の中間工程でそれほど制度がいらなければノギス、最終製品の合否判定を行いたいのであればマイクロメーター、というように使い分けることで、限られた検査コストの中でも効率的に品質を管理することができます。
測定精度を保つためのポイント
どんなに高精度な測定機器を使っていても、使い方が適切でなければ正しい数値を得ることはできません。
- 定期的な校正を行う。
- 測定方法は作業者間で統一する。
- 線を回して複数箇所を測定する。
マイクロメーターやノギスなどの接触式の測定機器は、ピンゲージなどを使った定期的な校正・点検を行っていないと、知らないうちに測定値がズレてしまっている場合があります。
先述したマイクロメータのラチェットの使い方のように、作業者で測定方法を統一していないと、同じものを測っても測定値が大きく異なってしまうことがあります。
線の断面は完全な真円ではなく多くの場合で楕円になるため、一箇所だけを測定して合否判定を行うのではなく、90°ずらした位置など複数箇所を測定して偏径差も確認することで、より実態に近い品質管理ができます。
一箇所だけ測って安心していたら、別の角度では規格外だった、ということもあり得ます。
線径測定機器の紹介 まとめ
この記事では、伸線加工で使われている代表的な3つの線径測定機器について、それぞれの特徴や使い分けを紹介しました。
マイクロメーターやノギスのような接触式の機器は手軽で扱いやすく、レーザー測径機のような非接触式の機器は生産中のリアルタイム測定ができることに強みがあります。
線径は伸線加工において最も基本的ですが、最も大切な品質項目であるからこそ、一つの機器だけに頼るのではなく、目的に応じて複数の測定機器を使い分けることが大切です。
測定機器の見直しや導入を検討する際に、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。



