キャプスタンとは?【伸線機における役割と仕組み】

キャプスタンについて解説する記事のアイキャッチ画像

伸線機の構造について調べていると、「キャプスタン」という言葉を目にすることがあります。

ノンスリップ式伸線機の「ブロック」とは何が違うのか、なぜスリップさせながら伸線を行う必要があるのか、疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

この記事では、伸線機におけるキャプスタンについて、その役割や仕組み、ブロックとの違いを紹介していきます。

目次

キャプスタンとは?

キャプスタンとは、線材を巻き付けて回転させることで、線を引っ張りながら送り出す円柱状の回転体のことです。

もともと船の錨(いかり)などを巻き上げる、円柱状の巻き上げ機のことをキャプスタンと呼んでいることに由来しているようです。

キャプスタンのイメージ(実際にはこんな使われ方はしませんが)

伸線加工においては、スリップ式伸線機で使われる部品として登場することが多く、ノンスリップ式伸線機の「ブロック」と役割は似ていますが、動作の考え方が根本的に異なります。

見た目はよく似ていますが、中身の考え方が全く違います。

キャプスタンとブロックの違い

キャプスタンとブロック、どちらも線をダイスから引き抜くための巻き取り部分ですが、その制御方法に違いがあります。

ブロック(ノンスリップ式)

ブロックは1つにつき1つのモーターを搭載しており、線の太りや減面率の変化に応じて、個別にリアルタイムで回転数を調整することができます。

そのため、線とブロックの間でスリップ(滑り)が発生しないよう制御されており、そのような伸線機を「ノンスリップ式伸線機」と呼ばれています。

キャプスタン(スリップ式)

一方でキャプスタンを使ったスリップ式の伸線機は、1つのモーターでベルトやギアを介して、複数のキャプスタンをまとめて回転させる方式で使用されます。

個別に速度を制御することができないため、線の太りなどを見込んで、あえてキャプスタンの方が少し速く回るように設定し、線とキャプスタンの間で意図的にスリップを発生させながら伸線を行います。

個別制御をしない分、構造がシンプルというメリットがあります。

このスリップを前提とした伸線機を「スリップ式伸線機」と呼び、その中でもキャプスタンの使い方によって、さらに2種類に分けられます。

キャプスタンの仕組み【2つの方式】

スリップ式伸線機は、キャプスタンの回転数を変えるのか、直径を変えるのかによって、「タンデムキャプスタン式」と「コーン式」の2種類に分かれています。

タンデムキャプスタン式

タンデムキャプスタン式は、同じ直径のキャプスタンを並べ、ベルトやギアによって、後段(細い線径側)に行くほど回転数が速くなるように設定されている方式です。

タンデムキャプスタン式伸線機のイラスト

大きな直径のキャプスタンを使用しやすいため、コーン式よりも比較的太い線の伸線に使用されることが多い仕組みです。

コーン式

コーン式は、全てのキャプスタンが同じ回転数で回転しますが、後段に行くほどキャプスタンの直径が大きくなるように設計されており、直径の違いによって周速(線を送り出す速度)を上げています。

コーン式伸線機のイラスト

直径の異なるキャプスタンが同軸上に並んだ見た目が、とうもろこし(コーン)のように見えることから、この名前が付けられています。

このキャプスタン径の比率(キャプスタン比)は、減面率から計算で求めることができます。

どちらの方式も、キャプスタンの径やギア比があらかじめ固定されて設計されているため、ダイス1枚あたりの減面率がある程度限定されてしまうという特徴があります。

キャプスタンの役割

キャプスタンには、伸線加工を安定して行うための、いくつかの大切な役割があります。

線を引き抜くための動力伝達

もっとも基本的な役割は、伸線ダイスから線を引き抜くための動力を伝えることです。

線がキャプスタンに巻き付いて摩擦力で保持されることにより、キャプスタンの回転がそのまま線を引っ張る力に変換されます。

冷却の役割

ノンスリップ式のブロックと同じく、キャプスタンの内部にも冷却水が循環している場合があり、加工熱で発熱した線を冷やす役割も担っています。

しかし、キャプスタンが使われる伸線機は湿式伸線機であることが多いため、潤滑液をキャプスタンと線に直接かけるものが多いイメージです。

張力(テンション)の発生

キャプスタンが線を引っ張ることによって、線には張力が発生します。

ストレート式伸線機などでは、この張力を一定に保つためにダンサーローラーという機構を使い、ブロック間の速度差から生じる張力の変動を吸収しています。

スリップ式の場合にはバックテンションの考え方とあわせて理解しておくと、キャプスタンでの張力の役割などがわかるかもしれません。

キャプスタンとは まとめ

今回は伸線機におけるキャプスタンについて、ブロックとの違いや役割を紹介しました。

キャプスタンは、ノンスリップ式伸線機の「ブロック」とは異なり、あえて線とのスリップを許容しながら伸線を行うための部品です。

タンデムキャプスタン式・コーン式という2つの方式があり、それぞれキャプスタンの回転数や直径の工夫によって、線が細くなるにつれて必要となる速度アップに対応しています。

伸線機の構造を理解するうえで、キャプスタンとブロックの違いを押さえておくと、スリップ式伸線機のことがわかりやすくなると思います。

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この記事を書いた人

伸線加工を行っている会社で品質管理を行っています。
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